画期的な遺伝子治療の実現と現状

遺伝子治療への過度な期待

遺伝子が欠損したり不具合が生じたりしてしまっているために、さまざまな疾患を患ってしまっている人が大勢います。そういった遺伝病を持っている人は多数ではないものの、確かな数がいて闘病生活を送らざるをえない状況に立たされているのが事実です。遺伝的に病気となってしまっていることから原因治療が難しく、対症療法を行いながら一生を過ごすことになるのも珍しくありません。臓器移植だけが生き残る道となるというような疾患もあれば、そもそも治療法がなくて諦めざるをえないということすらあるのです。そういった患者の目からみると画期的に感じられ、すぐにでも治療を受けたいと考えるのが遺伝子治療です。最新の医療の一つである遺伝子治療は、ベクターを利用して遺伝子組み換えを行うことで、疾患の原因となっている欠損あるいは不具合のある遺伝子を正常なものにしてしまおうという考え方に基づくものです。そういった説明がなされると患者は自分の遺伝子を全て書き換えることによって、遺伝子が正常な人と同じようになれると考えてしまいがちです。しかし、実際には全ての細胞の中にある遺伝子を書き換えるということは実質的に不可能であり、正常な遺伝子をもつ組織を導入したりすることで不全になっている臓器の機能を取り戻すのが基本的なアプローチになります。そのコンセプトは出来上がっているものの、実際に実現する技術面が追いついていない状況があり、安心して臨床応用できるレベルに達していないのが現状です。